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住み替えのノウハウ

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

新築時から年数が経過した「高経年マンション」が増加するにつれて、マンション管理の問題がクローズアップされてきました。なかでも建物を長持ちさせるための大規模修繕工事は物件の資産価値を左右すると言われているだけに、すでにマンションを所有しているオーナーだけでなく、これから購入を検討している人にとっても注目すべきポイントです。資産価値を高めるためのマンションの「大規模修繕」が適切に実施されているかどうか、どのように見分ければよいのでしょうか。

建物を長持ちさせる大規模修繕で税金が軽くなる

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

2022(令和4)年の年末に発表された「2023(令和5)年度税制改正大綱」には、新たな制度として「マンション長寿命化促進税制」の創設が盛り込まれました。この制度は一定の要件を満たすマンションで長寿命化につながる大規模修繕工事が実施された場合に、翌年度の固定資産税について建物分の税額を減額するというものです。

制度の対象となるマンションは築20年以上かつ10戸以上で、管理計画の認定を取得したマンションです。また、長寿命化工事を過去に1度以上実施していて、2023(令和5)年4月1日~2025(令和7)年3月31日の間に2回目以降の長寿命化工事を完了していることも要件です。この制度が適用されると、各住戸が翌年度に支払う建物部分の固定資産税が1/2~1/6の範囲内で減額されます。

長寿命化工事の詳細については今後明らかになると思われますが、国土交通省では「屋根防水工事、床防水工事および外壁塗装等工事」としています。いずれも大規模修繕工事で実施されることの多い工事と言えるでしょう。

こうした新しい税制がつくられた背景には、高経年マンションが急増しつつあるという事情があります。国土交通省の推計によると、築40年を超えるマンションは2020(令和2)年末の時点で約103万戸あり、10年後には2.2倍の232万戸に、さらに20年後には3.9倍の405万戸に急増するとのことです。

高経年マンションの推計戸数

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

【出典】令和2年末の築50年超の分譲マンション戸数は、国土交通省が把握している築50年超の公団・公社住宅の戸数を基に推計。今後、築30、40、50年超となる分譲マンション戸数は、建築着工統計及び国土交通省が把握している除却戸数等を基に推計した2020(令和2)年末時点の分譲マンションストック戸数を基に推計。(国土交通省資料より)

高経年マンションの多くは各住戸の所有者(区分所有者)が高齢化し、加えて近年の工事費の高騰により、大規模修繕工事に必要な修繕積立金が不足しがちなのが実情です。大規模修繕工事が適切に行われないと、給排水管からの水漏れや外壁の剥落など建物が劣化し、資産価値の大幅な低下を招くことになります。逆に言えば適切な修繕工事を行うことで建物の劣化を防げれば、資産価値を維持することも可能なのです。

管理が適切なマンションを自治体が認定

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

マンション長寿命化促進税制の対象となるマンションの要件として、「管理計画の認定を取得」というものがあります。これはマンション管理適正化法に基づいて2022(令和4)年4月にスタートした「マンション管理計画認定制度」による認定のことを指しています。この制度はマンションの管理組合が管理計画を作成して自治体に申請し、一定の基準を満たしていれば認定を受けられるというものです。

マンション管理計画の認定基準は、「管理組合の運営」「管理規約」「管理組合の経理」「長期修繕計画の作成および見直し等」「その他」の5つです。このうち大規模修繕工事に関わる基準は「長期修繕計画の作成および見直し等」ですが、これはさらに以下の6つの項目に分かれています。

①長期修繕計画が標準様式に準拠し、内容およびこれに基づき算定された修繕積立金が集会(総会)で決議されている
②長期修繕計画が7年以内に作成または見直しがされている
③長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
④長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
⑤長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない
⑥計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている

この項目を見ると、30年以上の長期修繕計画を作成し、それに基づいて適切な修繕積立金を徴収することが求められていることが分かります。では適切な修繕積立金はいくらなのかというと、国土交通省では平均額の基準を以下のように示しています。

【出典】国土交通省資料より

【出典】国土交通省資料より

例えば延床面積が5,000平方メートル未満の場合、修繕積立金の月額は平方メートル当たり235円以上となるので、専有面積70平方メートルであれば「235円×70平方メートル=1万6450円」以上が基準となります。この金額は長期修繕計画の期間全体における平均額なので、新築当初はもう少し低い金額に設定して段階的に引き上げるケースもあるでしょう。

管理計画の認定を受けていれば、自分が所有しているマンションや買おうとしているマンションが適切な長期修繕計画を作成していることが判別できます。とはいえ認定制度はまだスタートしたばかりということもあり、認定件数は2023(令和5)年2月24日時点では全国で26件に過ぎません。

ただ、販売時点で管理組合が結成されていない新築マンション向けに「予備認定」という制度があり、こちらは認定物件が着々と増えています。長期修繕計画についての認定基準は中古マンション向けのものとほぼ同じで、2023(令和5)年2月21日時点の認定件数は585件です。これらのマンションがいずれ中古市場に出回るようになれば、認定を受けた物件として大規模修繕工事が適切に行われることが予測できるマンションを探しやすくなるでしょう。

管理体制を星の数でランクづけする制度もスタート

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

管理状態や大規模修繕工事の内容が適正なマンションの指標としては、「マンション管理適正評価制度」もあります。これは管理会社の業界団体である(一社)マンション管理業協会が運営する制度で、マンション管理計画認定制度と同じく2022(令和4)年4月にスタートしたものです。

マンション管理適正評価制度では、マンションの管理状態や管理組合の運営状態について30項目を評価します。そのうち大規模修繕工事や長期修繕計画に関連する項目としては、「修繕積立金の額」「長期修繕計画の有無」「直近5年間の共用部分の修繕等の履歴情報」などが挙げられます。

これらの評価項目は項目ごとに点数化されます。例えば直近5年間の共用部分の修繕履歴情報があり、工事の竣工図面などが保管できていれば10点ですが、履歴情報がない場合は0点といった具合です。点数は合計され、星の数で0から5まで6段階の評価が付きます。合計点が90~100点なら「特に優れている」とされて星5つ、0点以下なら「管理不全の疑いあり」とされて星0です。

資産価値を高めるマンションの「大規模修繕」。その見分け方は?

このマンション管理適正評価制度を利用するには、マンションの管理組合が管理会社に評価を依頼し、マンション管理業協会に登録が必要です。登録されたマンションの星の数や点数は、同協会の「マンション管理適正評価サイト」で閲覧が可能です。2023(令和5)年2月24日現在の登録件数は全国で468件となっており、そのうち108件が星5つとされています。

評価サイトを見ると、マンションごとの星の数や点数だけでなく、管理委託形態や大規模修繕工事の実施予定、修繕積立金の徴収の有無といった詳細情報も表示されています(未記載のケースもありますが)。前述のマンション管理計画認定制度に比べると登録件数が多いので、マンション名などから検索することで所有マンションや購入検討マンションを見つけられる可能性も高いでしょう。

マンションの資産価値を維持するうえで、長期修繕計画や大規模修繕工事は重要なポイントですが、内容が専門的なので詳細を理解するにはハードルが高いかもしれません。ましてや不動産広告の物件概要などを見ても管理に関する内容は細かく書かれていないことが一般的なので、そのマンションの維持管理状態が適切かどうか判断しにくいのが実情でした。しかし今回紹介した認定制度や評価制度を確認すれば、中古マンションを購入する際の参考になるでしょう。また、すでに所有しているマンションの管理状況を確認するのに利用したり、管理体制の見直しの際に認定や評価の基準を参考にするといった活用方法もありそうです。

■筆者:大森広司(おおもり・ひろし)

2023(令和5)年度「税制改正大綱」を解説!

住宅ジャーナリスト。SUUMO、All Aboutなど情報誌やネットで住宅関連全般にわたって取材・執筆活動を続けている。近著に『マンション管理 修繕 建替え 徹底ガイド』(共著・日本経済新聞出版社)、『あなたのマイホーム絶対トクする入手ガイド』(共著・日本実業出版社)などがある。


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